INNOVATION

アデランス50年の進化(技術革新の歴史)

サイバーヘア&バイタルヘア
開発プロジェクト
『人毛を超える
人工毛髪ができるのか』
~技術で切り拓く未来~

アデランスが進める研究において、長年に渡り、立ちはだかる大いなるテーマ。
「人毛を超える人工毛髪ができるのか。」
ここでは、アデランスのこれまでの研究の軌跡を辿っていきます。

第一章 
変わりゆくウィッグ事情

1968年創業以来、「毛髪の悩みを解決する」べく、ユーザーにウィッグを提供してきたアデランス。

経済が発展し、オシャレの需要が高まるとパーマやカラーをしていない良質なヴァージンヘアーは入手困難となった。アデランスを含めウィッグメーカー各社は、良質なヴァージンヘアーを中国からの輸入に頼っていた。

しかし、1980年代、中国の女性の間でもオシャレの需要が高まりを見せ、近い未来、ヴァージンヘアーの入手が困難になることが予測できた。

また当時の人毛のウィッグは毛がらみが多く、扱いが難しかった。

そこで、ウィッグメーカー各社は、ヴァージンヘアーに頼らないウィッグ、すなわち、人工毛髪の独自開発の必要性に迫られた。

他社が人工毛髪を委託製造する中、アデランスは、自社による人工毛髪の製版一体に拘り、1983年人工毛髪の研究開発に着手。その研究開発のメンバーの中には、のちに革新的な人工毛髪を生み出した技術者、白樫 豊の姿があった。

当時の研究開発メンバー

人工毛髪の開発は、 そう容易いものではありませんでした。

困難を極めた研究開発を続ける中で、白樫さんを奮い立たせた言葉

『開発者は好奇心を持ったバカがいい』

はたして、この言葉の真意は? 人工毛髪の開発に迫ります。

第二章 
素人が生み出した革新的な人工毛髪

アデランスに入社して2年。事務系の仕事をこなしていた白樫は、突然、上司に研究開発室への異動を命じられた。大学は文学部を卒業した白樫は、高校の化学程度の内容でさえ理解できなかった。

しかし、白樫に立ち止まっている暇はなかった。休日は図書館に通い、児童向けの図解などを見て、化学の基礎を頭に叩き込んだ。さらに、白樫たち開発チームは、秋葉原や合羽橋で、材料をかき集め、人工毛髪製造試験装置を手作りで製作。

白樫が独自に描いた設計図

こうして完成した自作の装置が、後に、基本的な繊維製造装置と大差ないことが分かった時、白樫は自信を持ったのと同時に、自分のオリジナリティのなさに落胆もしたという。

当初から現在まで機械作りにご協力いただいている、株式会社ムサシノキカイ 加藤社長はこう語る。

株式会社ムサシノキカイ 加藤 一孝 社長

「そんなこと機械で本当にできるの? っていうことが、結構ありましてね。ただ、よく考えてみると、あれ? これって面白い逆のアプローチだねって。それを我々は機械で現実化していく、これが非常に楽しいところがあるんですね」(加藤社長)

人工毛髪の開発を続ける白樫たち開発チームに与えられた命題。それは――。

『人毛を超える人工毛髪をつくる』

人毛を超える人工毛髪を作る上での課題は、強度、吸水性、耐熱性、変色退色しないこと、そして何より、人毛のように自然な風合いにすること。この条件を満たす材料を探し出すことは、容易ではなかった。

素人たちの集まりだった白樫たちは、専門家に協力を依頼。快く引き受けてくれたのが、工学博士の福原節雄氏である。

高分子科学研究者 福原 節雄 工学博士

福原氏は白樫に、開発者としての姿勢をこう伝えた。

『論より実験』

白樫たちは福原氏の助言通り、実験を繰り返した。そして、人工毛髪の条件である、強度、吸水性、耐熱性をクリアできる素材として、他社が使用していないポリアミド樹脂にたどり着いた。

また、変色退色の問題は、 材料に色を練り込むことで解決した。

こうして順調に進むかと思われた、人工毛髪の開発はすぐに行き詰った。大きな問題が立ちはだかったからだ。それは―――。

「自然な風合いができない」

最大の課題である「人毛のような自然な風合い」が、人工毛髪ではどうやってもできなかったのだ。

人毛にはキューティクルがあり、光をきれいに反射させない。一方、ポリアミド樹脂の毛髪には、キューティクルなどの凹凸がなく、光をきれいに反射させてしまうため、不自然な光沢がでてしまうのだ。

解決の糸口を掴めない白樫に、福原氏はこんな言葉をかけたという。

『開発者は好奇心を持ったバカがいい』

ある日、白樫がポリアミド樹脂のサンプルプレートを見ていると、あることに気づいた。

プレートの周囲は光沢があるのに、真ん中に行くにしたがって、光沢がなくなり、濁っていたのだ。これは、プレートを作る際に、周囲から冷えて固まり、真ん中が一番遅く冷えたことを示していた。

顕微鏡で見てみると、繊維の表面に球晶とよばれる球状の結晶ができていた。そして、冷却の条件によって、球晶の大きさが変わるということが分かった。繊維を扱う研究者やメーカーにとって、光沢を奪い、物質に影響を与える球晶はタブーであり、忌み嫌われていた。

しかし、白樫はこの球晶を応用すれば、人毛のキューティクルのような凹凸を生み出せるのではないか? と考えたのだ。

そして、この仮説を立証するため、幾度も実験を繰り返し、膨大なデータを取って一番適切な冷却条件を探した。

そしてついに、6年を費やし、人毛のキューティクルのような凹凸を生み出すことに成功した。

現在、学術的アドバイザーとしてプロジェクトに参加いただいている、東京工業大学大学院 鞠谷教授は、白樫の発見に関してこう語る。

東京工業大学大学院 理工学研究科 鞠谷 雄士 教授

「球晶なんかできない条件を探すのが、普通の繊維の作り方で。ただし、ナイロンの場合は表面に球晶ができるというのは、我々も知識としては持っていました。ただそれを積極的に利用して、使おうっていう発想までは知らなかった」(鞠谷教授)

『開発者は好奇心を持ったバカがいい』

白樫は、人工毛髪に人毛のようなキューティクルを作りたいという一心で、タブーとされる球晶を逆に利用することを思いつき、見事にやり遂げたのだ。

サイバーヘアと名付けた革新的なその人工毛髪は、1991年に発売され、アデランスの主力商品となった。

その後も白樫たち開発チームは研究を続け、2000年、これまでの常識をくつがえすほどナチュラルで、かつ人毛の欠点を補う人工毛髪「バイタルヘア」を発表。

人工毛髪特有の不自然な光沢を抑え、自然な艶を表現し、さらに変色・退色もしない「バイタルヘア」。水分を弾く従来の人工毛髪とは違い、人毛同様に吸水性を持ち、水に濡れた時、人毛のように形状を自然に変化させます。

さらに、耐熱性、形状記憶性を高めた「バイタルヘア」は、熱湯につけた後、ドライヤーで乾かすとカールの形状が戻ってきます。

「バイタルヘア」が吸水性、耐熱性、形状記憶性を可能にした秘密、それは、「鞘芯構造」。 水分を吸収すると柔らかくなる「鞘」と、固くて水分の影響を受けにくい「芯」の二重構造により、濡れた時も天然毛髪同様の質感、コシ感を再現することに成功。 自毛感覚で扱えるフィーリングを手に入れた鞘芯構造は、世界24ヶ国で特許を取得した。

2003年に亡くなった福原氏は生前、サイバーヘアの完成を自分のことのように喜び、白樫にこう語ったという。

『企業は人なり
研究開発も人なり
サイバーヘアはその成果なり』

自社で開発・製造できる機能を持つウィッグメーカーとして、技術開発への挑戦に惜しみない支援を行う。その姿勢にこそ、アデランスの強みが隠されているのかもしれません。

企業は人なり、研究開発も人なり――。
1983年に始まった人工毛髪の研究は、現在も続いている。

生前の福原氏と白樫

第三章 
受け継がれるアデランスの伝統

今、ウィッグの可能性はさらなる広がりを見せている。

研究により、ウィッグを使用することで、ユーザーの心理的QOL(Quality of Life)を改善させる効果があることも実証されている。

さらに、ウィッグは国内にとどまらず、アメリカを中心に、アジア圏を含め、グローバルな規模で需要が高まっている。

可能性に満ちたウィッグ業界の未来は、白樫の意思を継ぐ二人の若い研究者に託されている。

商品企画開発部の加藤は、アデランス入社前まで音楽学校に通い、作曲家を目指していたという。その異色の経歴は、白樫と重なる。

株式会社アデランス 商品企画開発部 加藤 勇気

「まずは白樫さんが、目指していたものを目指そう。目指している間に、きっと自分のやりたいこと、目指すべきものが見えてくると思うので、見つけていきたい、やっていきたいと思っています。」(加藤)

もう一人の若い研究者、佐藤も思いは加藤と同じだ。

株式会社アデランス 商品企画開発部 佐藤 駿祐

「会社としてはやっぱり、物を作って行かなきゃいけないと思っているので、もう少しそっちの製品化に向けて頑張りたいなって思っています。」(佐藤)

学術的アドバイザーの鞠谷教授は、2人についてこう語る。

「佐藤さん、加藤さんは、まだまだ若いですけど、急速にたぶんこれから伸びていかれると思うので、これからを期待しています」(鞠谷教授)

常識にとらわれない発想、そして、飽くなき探究心は次世代の研究者たちにしっかりと受け継がれている。

サポートして下さるお二人は、今後をこう語る。

「奥の深い学問がちゃんとそこに横たわっているんですよね。要するに、自分で理解していくことがすごく、大事だと思っています。それをするのが逆に、アデランスさんの商品開発に結び付いていく。なんかの形の助けになるって言うのが、一番理想の形かなと。楽しいです。それは、間違いなく楽しいです。」(鞠谷教授)

「今まで世の中にないものを創り出すというのは、これは、とにかくワクワクするんですね。それを現実化したい。いろんな研究開発をですね、一緒に進めながらやっていきたいなという風に思っております。」(加藤社長)

株式会社アデランス 代表取締役社長 津村 佳宏

「私たちのこの商品開発において、オンリーワンイノベーションという、他社にはない技術を追求していく。この商品力ということが、一番重要だと思っております。やはりこれは、世界中の毛髪で悩む方々を笑顔に変えたいということを、目的として、使命として、日々活動している状況でございます。」(津村)

これまでアデランスは、毛髪の悩みを解決すべく、ユーザーに最高の商品を届ける、という約束を果たすために歩んできました。そして、これからも、その惜しみない努力は変わりません。

近い未来まだ誰も見たことのない、新たな技術を生み出し、この白紙のページに努力の軌跡が書き込まれることでしょう。

全ては、未来への約束の為に。