イベントレポート

第7回「ピンクリボンの
お宿シンポジウムin仙台・作並」

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「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(略称:リボン宿ネット)は、乳がんの手術の痕を気にして旅行を諦めてしまう女性の方たちに、周りの目を気にせずに楽しんでいただきたい、心ゆくまで旅館、ホテルでの入浴などを楽しんでいただきたいという目的で、2012年7月に設立されました。アデランスは、リボン宿ネット設立当初より、活動を応援しています。

初夏の作並温泉で、7回目のシンポジウム開催

2019年5月28日、宮城県仙台市・作並温泉にある「元湯鷹泉閤 岩松旅館」において「第7回ピンクリボンのお宿シンポジムin仙台・作並」が開催されました。

JR仙台駅から在来線で約40分、作並は古くから仙台の奥座敷と称され、地元の方からだけでなく文化人からも愛されて来た温泉地です。近年はドラマで話題になったウィスキーの蒸溜所があることから、さらに人気も高まっているそうです。

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作並駅からは無料の送迎バスで約5分、シンポジウムの会場となった「元湯鷹泉閤 岩松旅館」は地元の人なら知らない人はいないというほどの、作並温泉発祥の温泉として知られる大きな旅館です。

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この日は、会員だけでなく地元旅館や医療関係の方など含めて参加者は40人以上。一番遠方の方で熊本や鹿児島など九州からの会員がいらっしゃいました。

会長の畠ひで子さん(「匠のこころ 吉川屋」女将)から、ご挨拶があり、会の活動紹介や、設立当初に比べ会員数は3倍近くに伸びていること、毎年10月に10万部発行している「ピンクリボンのお宿」冊子を、患者さんが病院などで手にすることで温泉旅行に出掛けるきっかけになっていると報告されました。

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社会と医療が、どう患者さんに関わって行くかを考える

基調講演された、一般社団法人CSRプロジェクト代表理事の桜井なおみさんは、ピンクリボンのお宿ネットワークとの関わりも深く、第1回目のシンポジウムからずっとご講演されています。

「その頃から一番変わって来たなと思うのは、入浴着を使う宿が増えて来たということと、患者さんを特別扱いしない取り組み、いわゆる『がんとの共生』が増えて来たことだと感じています」とお話しされ、がんの予防からスタートし、社会として一人ひとりとして何ができるかについてプロジェクターで資料を交えながら「女性のライフサイクルとがん 何に備えるべきか」をテーマにご講演くださいました。

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ご自身の経験から、高齢者のがんを支える家族も含めてどう支援して行くか、患者さんがどう地域社会と繋がりを持って行くかが今課題になっていると仰られ、社会と医療がどうあるべきかACP(アドバンス・ケア・プランニング)の観点から、患者さん自身が自分はどのように生きたいかを考え、家族と一緒に話し合うことが今後一層必要になると予測されるそうです。2020年の東京パラリンピックに出場されている選手の中には、15歳から39歳までのAYA世代と言われる若い世代のサバイバーもいらっしゃるとのことで、高齢者だけでなく、もっと身近で全年齢の問題として考えて行かなければならないと感じました。

さらに桜井さんからは、がんになっても安心して働けるよう「健康経営」に取り組む企業の紹介や、がんにならないだけではなく、病気になった時に、高齢者でも若い人と同じ位しっかり治療を受けられるように健康寿命を延ばすことの大切さのお話がありました。医療関係者の方と接する機会の多い桜井さんならではの非常にためになる内容でした。

それぞれの「幸せの総合量」を増やすことを第一に

ご自身も乳がんサバイバーである桜井さんですが、治療の中で一番不安だったのは抗がん剤とアピアランスの問題だったそうです。

「脱毛や皮膚の色素沈着など、副作用で生活を楽しむことができなくなることを嫌がる患者さんは多く、旅行に行けないというのはその典型的なものです」と仰います。

アピアランスケアに限らず、がん患者さんを支援する上で一番大切なのは「幸せの総合量」を増やすことであり、おしゃれをする、美味しいものを食べる、人それぞれ幸せだと思うことは違います。画一的に考えるのではなく、一人ひとりの幸せの総合量を増やすことが患者さんを支援する上で大事なのだそうです。

「服を脱いだらお腹や首に手術の跡がある人もいます。乳がん患者さんだけではなく色々な人に生活を楽しんでもらうということが、ピンクリボンのお宿の考え方から広がってくれれば良いと思います。入浴着も乳がん患者さんが傷跡を隠すためだけでなく、着たい人は着てくださいと旅館側が提示することで、気兼ねなく、より使いやすくなるのではないでしょうか」

色々な方面からの視点で、医療の現場にいるからこそ重みがあり、発展的な桜井さんのお話に、会員のみなさんは聞き入っていました。

続いて、「元湯鷹泉閤 岩松旅館」 営業予約課 課長・藤村英子さんによる活動報告がありました。

13年前に甲状腺がんの手術をした経験から、今でも定期的に検査を受けているという藤村さん。朗らかな話し方と、時折ジョークを交えながら岩松旅館で行っている「ピンクリボン家族の日」の取り組みについてご説明いただきました。

岩松旅館では毎年ピンクリボン月間に合わせ、10月の第一水曜日に「ピンクリボン家族の日」を行っています。乳がん手術を受けた方、治療中の女性と寄り添う方やご夫婦、ご家族のために、その日は全館貸切にしているそうです。

岩松旅館は低張性弱アルカリ性高温泉で、保湿効果が高く、切り傷や皮膚病に良いとされる、自然湧出の源泉掛け流しのお湯です。その効能あるお湯をもっとたくさんの人に知ってもらいたいと思っていた時に、ピンクリボンのお宿ネットワークの活動を知り、始めは女性限定でしたが、試行錯誤しながら今年で7回目を迎え、集客数も徐々に伸びて来ているそうです。「ピンクリボン家族の日」の取り組みとして、脱衣所の工夫やゆったりしたチェックイン・チェックアウト、養生に配慮し地元の有機野菜をふんだんに使ったメニューなども昨年の実例をあげてご紹介いただきました。患者さんだけでなく、ご家族も楽しめるようなメニューをバイキングで用意しているそうで、全ての宿泊客に満足していただけるような工夫を色々しているのだと知り、心が温かくなりました。

休憩を挟んで、弊社の徳正修から「アデランスのCSR活動~髪を通じて心の健康をサポート」をテーマに講演が行われ、海外でのCSR活動の紹介を始め、患者さんの就労支援にともなうアピアランス活動についての報告がありました。

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岩松旅館さんでは宿泊される方は24時間温泉を利用できますが、時間を区切って日帰り入浴も行っています。渓流沿いの素晴らしい眺めは格別で、日頃の疲れを忘れてリフレッシュできました。藤村さんの活動報告にもあったように、洗い場の中にカーテンで仕切られている場所があり、「ピンクリボン家族の日」だけでなく普段からこういったスペースがあるのは、患者さん以外にも嬉しい心づかいだなと感じました。

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