アデランス

アデランスの研究開発 Case

看護学の立場から毛包の再生を目指す

東京大学 大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 創傷看護学分野 特認講師 峰松 健夫 特任講師

看護学の立場から活動を止めた毛包の再生を目指しています

患者様に寄り添う看護学だからこそ持ちうる視点、モチベーションがある。
脱毛症の問題は毛髪だけではなく、頭皮全体としてとらえなければならない。
しかし、だからこそ毛包の正常化が一層重要視されてくる。

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健康な皮膚にとっても毛髪は重要な存在である

毛髪再生の研究に関わるきっかけを教えてください

私は農学部出身で畜産学が専門だったんです。世界初のクローン羊「ドリー」で使われた体細胞核移植をニワトリに応用するという研究を大学院生のときにやっていました。そこから基礎医学の世界に入り、神経の再生医療の研究をしており、脊髄損傷の患者様たちがかかえる問題を知ることになりました。脊髄損傷の患者様は車椅子生活になるので、褥瘡ができます。
その関係で看護学の教室と関係ができたのが始まりでした。
そこでまずは皮膚そのものの研究でした。異物の体内への侵入や、体内から水分や電解質などの漏出をブロックするバリア機能というものが皮膚にはあるのですが、加齢や疾患によってバリア機能が低下すると痛みや痒みを伴ったり、創傷や感染症に発展したりします。
その研究の中で、毛穴の内側がバリア機能の弱いところだと認識しました。
体毛があればキャップでふさがれているような状態なんですが、体毛がないと外気にさらされた状態になる。これは皮膚の健康を考える上では好ましくない。「毛包は重要だな」と実感しました。
同時に、脂線、汗腺などを含めた皮膚付属器と一緒に考えないと皮膚は説明できないだろうな、とも思いました。

具体的に、どういうところから気づかれのたのでしょうか。

高齢者でオムツを長期間にわたって着けていると、褥瘡が発生しやすくなります。何故かと調べていくと、オムツの中で湿った状態になることが問題だと分かってきました。
湿った環境が続くと皮膚が、いわゆる“ふやけた”状態になってしまいます。そうなると本来は皮膚から侵入できないはずの分子量の大きなタンパク質などが侵入してしまう。この蛋白質自体の作用や、それに対する炎症反応によって皮膚が脆弱になってしまうのです。
そういう現象を起こしやすいところを追求していくと、毛包に行き着きました。皮膚のなかでも毛包が、もっともバリア機能が脆弱なところなんです。
毛髪が豊富な頭皮では、毛包の重要性が他の皮膚と比べて極めて大きいと言えます。つまり、スキンケアを考えるなかでも、頭皮には特化して研究する必要があると感じました。そうすることが、患者様全体へのスキンケアを実現することにもなります。

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火傷で失った毛髪も再生できる可能性がある

研究は現在、どのような段階に入っているのでしょうか。

看護学と接して褥瘡を真剣に考え、褥瘡のような傷が原因で失われた毛髪を再生したいと思いました。前職までは再生医療の研究をしていましたから、このふたつのキャリアが合致したなと思っています。これは驚きというか、喜びですね。
ひどい褥瘡や火傷が治癒すると、その部分は毛包も含めた皮膚付属器が失われた瘢痕という状態になります。瘢痕組織では、褥瘡が再発したり、痒みや痛みが生じたりするのですが、そういう瘢痕組織で毛包や皮膚付属器を再生し元の皮膚の状態に近づけること、それを究極の目標として描いています。
AHLは、褥瘡の研究の中で偶然に見い出されました。これまで、AHLが活動の停滞した毛包を活性化し発毛を促進する効果があることを証明され、また皮膚の酸化ストレスを著しく低減させる作用があることも分かりました。つまり、AHLは頭皮の健康を改善しつつ発毛を促進する薬剤として期待されます。
今は、これらの作用を一つずつ証明していき、AHLが頭皮に及ぼす影響の全体像を明らかにしようという段階です。

これは男性型脱毛症にも効果は期待できるのでしょうか。

可能性はもちろんあると思っています。男性型脱毛症だけではなく、男女を問わず加齢に伴って進行する加齢性脱毛症、免疫系の異常による円形脱毛症、そして抗癌剤によって頭皮全体がダメージを受ける薬剤性脱毛症、様々な脱毛症への応用が期待されます。
これまでいろいろな研究はありますが、商品化されているのは男性型脱毛が対象のものだけです。幅広い脱毛症へ効果のある、しかも看護師が使えるものとして実用化したいと考えています。

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インタビュー・文/前屋 毅
撮影/圷 邦信