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アデランスの研究開発 Case

毛をつくる幹細胞を維持する17型コラーゲンの役割を解明した

西村栄美教授は、毛包幹細胞のそばに色素幹細胞が潜んでいることを発見し、白髪になるシステムを解明した。この研究はさらに発展し、毛包幹細胞が発現する17型コラーゲンに注目。この17型コラーゲンが欠損すると、白髪はもとより薄毛が進み、脱毛を引き起こすことを明らかにした。ヒトが「毛をつくる」とはどういうことなのか、そしてその予防方法について、西村教授にお話をうかがった。

加齢性薄毛・脱毛の仕組みを解き明かす研究へ

なぜ髪の毛が抜けるのか──。
人間の髪の毛は成長期、退行期、休止期というヘアサイクルを繰り返しながら2?6年かけて生え変わっていく。例えば男性の前額部や頭頂部にみられる若年性の脱毛の多くは、男性型脱毛症で、男性ホルモンの影響だということが分かっており、そのメカニズムからフィナステリドなどの治療薬が開発されている。
これに対して、歳をとると老徴の一つとして毛髪全体の毛が細くなり、つむじや毛髪のわけ目を中心にエセ肌がめだつようになる。これが加齢性薄毛・脱毛だが、我々は「歳をとったのだからしょうがない」とあきらめていないだろうか。
加齢による白髪を含め、この加齢性薄毛・脱毛の仕組みを「幹細胞」の研究から明らかにし、加齢関連疾患の病態解明とともに、新たな治療法の開発・研究を進めているのが西村栄美教授だ。
「子どもの頃にアトピー性皮膚炎で皮膚が痒く、かぶれました。それはなぜ起こるのかと、皮膚への関心が高まって皮膚科医になった」という西村教授は、京都大学大学院医学研究科で色素細胞が発生してくる仕組みの研究(博士号を取得)に出会う。

色素幹細胞の発見により白髪のメカニズムを解明

その後に始められたという色素細胞再生の研究とは、具体的にどのような研究なのでしょうか。

色素性疾患、シロナマズといわれる尋常性白斑という病気がありますが、紫外線療法などでこの白班が消えて治っていく過程では、毛穴に一致して小さな点々の色素沈着ができ、それがどんどん大きくなって治っていきます。その現象が不思議で、この現象とよく似た現象をマウスで再現しました。これは、この色素のもとになる細胞は毛穴の中の毛包の中にあるのではないか、毛包の中に色素をつくる細胞、色素細胞のもとになる細胞が存在するのではないか、と始めた研究です。
その結果、毛包の中ほどのバルジ領域に毛包幹細胞の居場所があり、実はそこに色素細胞のもとになる細胞も潜んでいたのです。紫外線が当たると活性化され、細胞が皮膚の表面に泳いで来て、皮膚が再び色素沈着してどんどん増えていくわけです。その色素細胞のもとになる細胞こそが色素幹細胞で、これを見つけたのが2002年のことです。

色素幹細胞とは、どのような働きをする細胞なのですか。

色素幹細胞はふだんは黒髪になる色素細胞の供給源として働いています。バルジ領域付近で毛を生やす細胞をつくり出す毛包幹細胞と隣り合わせで存在し、色素幹細胞と毛包幹細胞は毛が生え変わるごとに色素を持つ毛を生やしていきます。

黒髪になるのも、その色素幹細胞の役割ですね。

そうです。ただし隣り合わせにいる毛包幹細胞は、色素幹細胞を維持するために必要な微小環境を提供する受け皿的なニッチ細胞なんです。つまり毛包幹細胞は毛をつくる細胞を生み出すという役割以外に、色素幹細胞を維持する役割もあるのです。毛包幹細胞が無くなれば、色素幹細胞も無くなるというわけです。

毛が抜けなくても、髪が白くなる人もいます。どうしてでしょうか。

マウスでも毛包幹細胞があり、色素幹細胞の方が弱い傾向があると、そうなります。たとえば、MITFという遺伝子に変異が起こり、毛が生え替わるごとにだんだんと毛が白くなるミュータントマウスの毛包を調べました。このマウスの色素幹細胞がどうなっているのか、と。すると、しだいに色素幹細胞が無くなっていき、毛母をつくる部分に存在しないといけない色素細胞も無くなっていました。

私たちのヘアサイクル(毛周期)でも毛包幹細胞によって生み出された毛包が伸びたり縮んだりしますが、通常毛包が下に伸びていくときに色素幹細胞によって生み出された色素細胞が受け渡されます。しかし、色素幹細胞が弱まってしまえば、色素細胞はそのまま幹細胞の居場所(ニッチ)に留まってしまい、毛をつくる毛母にまで到達しないので黒髪にはなれません。これは私たちの遺伝情報であるDNAに損傷が起こったために色素幹細胞が維持できなくなり、色素細胞がつくられなくなって白髪になるのです。

2010年に白髪の詳しいメカニズムを発表しましたが、そうした経緯もあって、歳をとってくると毛がだんだん細くなったり、毛の数が減ったりするのはなぜか、一体皮膚の深いところで何が起こっているのかと、毛髪の研究を本格的にするようになりました。

αリポ酸誘導体の研究

17型コラーゲンは毛包幹細胞の維持に必須

マウスの寿命は普通24~34カ月ですが、長生きする野生型マウスの毛包を12カ月、24カ月、28カ月と長い時間をかけて調べました。その過程で毛包自体がどんどん小型化、ミニチュア化していきました。ヒトでも毛包のミニチュア化は男性型脱毛症が進行すると見られますが、加齢でも同じように毛包のミニチュア化が進むことが分かりました。

そして、毛包のバジル領域には毛包幹細胞と色素幹細胞が存在しますが、それらを維持するのに重要な役割を果たしていたのが17型コラーゲンです。この17型コラーゲンも加齢とともに減っていく毛包が増えていたのです。

西村先生たちの研究グループは、2011年に国際科学誌Cell Stam Cell(セルステムセル)に「17型コラーゲンが白髪と脱毛を抑える」と発表しています。17型コラーゲンとはどのような存在なのでしょうか。

先天的に17型コラーゲン(COL17A1/BP180)が欠損すると、接合部型表皮水疱症という病気になり、その中でもとくに皮膚に摩擦が起こると水ぶくれになりやすくなるだけでなく、若くして髪の毛を失う脱毛症になることが知られていました。

まず、17型コラーゲンとは何かといえば、毛包幹細胞にとってニッチである基底膜の部分に係留し、繋ぎ止めておくのに重要な役割を果たしています。この17型コラーゲンが無くなると毛包幹細胞を繋ぎ止められないので、未熟な状態でバルジ領域から離れてしまい、幹細胞として機能せず、成熟した細胞になって表皮の角化細胞になってしまいます。先ほど、毛包幹細胞は色素幹細胞を維持する役割を果たしているという話をしましたが、毛包幹細胞が色素幹細胞を維持することが十分にできなくなるわけで、毛包幹細胞は毛をつくる細胞を毛包には供給できるのですが、色素幹細胞の子孫となる細胞である色素細胞は供給されなくなり、白髪になるというわけです。

そこで分かったことは、歳をとったマウスを使った研究でも17型コラーゲンを失った毛包がマウスの背中でも増えてきます。ヒトでも加齢に伴って17型コラーゲンを持っている毛包は減ってくるということです。実際に患者さんに同意を得て、手術のときに切除した側頭部の余剰皮膚を何年間かかけて分析しましたが、40歳の方の毛包に比べ、59歳の方の毛包は小型化していて、その毛包のなかにある17型コラーゲンの領域も非常に小さくなっていました。そうすると、再生してくる毛包自体も小さいですし、これによって毛もだんだん細くなり、本数も減ってくることが分かりました。

17型コラーゲンは、他の一般的なコラーゲンとは何が違うのですか。

普通、コラーゲンは20数種類ありますが、17型コラーゲンは膜貫通性のコラーゲンで、幹細胞と基底膜をつなぐために、いかりみたいな形をしているコラーゲンなのです。普通のコラーゲンは細胞外マトリックスとして皮膚の形をつくり、クッションのような役割も果たしますが、この17型コラーゲンは幹細胞が高いレベルで発現していて、細胞を幹細胞の居場所に繋ぎ止める役割を担っています。それは毛包幹細胞が色素幹細胞のニッチ細胞として機能するためにも必須のもので、このつなぎの役割により白髪と脱毛を抑えていることがわかったのです。

具体的には、毛包幹細胞は基底膜につながれているときはゆりかごのなかにいるように未熟な状態で維持されています。しかし、加齢に伴ってDNAの遺伝情報が損傷されると、17型コラーゲンが分解され、そこから解きはなされてしまい、幹細胞は成熟してしまうのですが、その際に毛をつくる細胞にならないで表皮の角化細胞になるということです。ちなみにこの角化細胞は表皮にずっと残るのではなく、皮膚の表面から落ちてフケや垢として皮膚の外に排出されます。

DNAの損傷による17型コラーゲンの減少とは、どういうことですか。

DNAの損傷は私たちが生きていて呼吸し細胞分裂がおこる限り、誰にでも起こることです。DNAの損傷を治す能力はだれにでもあるのですが、加齢したり、あるいは早老症候群の患者さんでその能力が低かったりすると、DNAが傷ついてしまいます。損傷が生じると修復のシグナルが入り、そこで幹細胞は眠っていられなくなって、角化細胞へと分化成熟するわけです。

17型コラーゲンは、ほかのコラーゲンでは代謝できないのですか。

こういう細胞と基底膜を膜貫通性につなげているコラーゲンは、他のコラーゲンのように注入することはできませんし、いかにこの17型コラーゲンを減少させないかが、薄毛や脱毛などの予防や治療のためには重要なカギになります。

17型コラーゲンが分解される一つのきっかけはDNAの損傷が原因で、それを修復するための好中球エラスターゼという酵素が毛包幹細胞のなかで間違ってつくられてしまうことで、これによって17型コラーゲンが分解される可能性が非常に高いと考えています。好中球エラスターゼというのは細菌感染と戦う重要な分解酵素なのですが、幹細胞のなかで働いてしまうと、幹細胞をつないでいた17型コラーゲンを分解して切ってしまうのです。

そこで好中球エラスターゼを抑制することで17型コラーゲンの分解抑制の可能性について検討していますし、ほかにも17型コラーゲンが減少しないようにするにはどうしたらいいか、あるいは増やすような薬ができないか、と研究を続けています。

加齢とともにやってくる薄毛や脱毛を防ぐ、または遅らせる手段を教えてください。

歳をとると毛包のミニチュア化が進みます。進みすぎると治療は難しくなりますから、比較的若い段階で対策に出た方が望ましいですね。加齢により幹細胞は少しずつ減ってきますが、突然一気に無くなるわけではありません。残っている幹細胞をなんとか活性化して17型コラーゲンが失われないようにすることで、自ら持っている幹細胞のプールをきちんと維持しようと試みることです。

インタビュー・文/佐藤彰芳 撮影/圷 邦信、田村尚行

アデランスの研究から生まれた開発と商品・サービスの歴史
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