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アデランスの研究開発 Case

「毛髪を培養して移植する」という夢は再生医療の急速な進歩で現実化しつつある

平成28年11月26日(土)に第21回日本臨床毛髪学会学術集会が開催される。
今回会長としてこの学術集会を主催する慶応義塾大学医学部の貴志和生教授と
毛髪専門医師として名高い倉田荘太郎院長に、「毛髪医療はどこまで進んでいるのか」
を語っていただいた。

毛髪の再生医療はどこまで進んでいるのか

この11月末に開催される第21回日本臨床毛髪学会学術集会のテーマは、
「 Dream Comes True」ですね。

桑名 隆一郎 医師

貴志和生:毛髪の研究は昔から行われてきましたが、基礎研究や内服療法を含め、ここに来て毛髪に関する夢が実現するまでになってきました。基礎研究としての再生医療が具体的に始められていて、再生医療を使って毛髪を生やすという夢が、ほぼ現実化しています。そして男性型脱毛症(AGA)の内服療法としては、今まではプロペシア(フィナステリド)だけだったのですが、新たにデュタステリドが発売開始になったことも大きいと思います。
さらに付け加えれば、植毛手術に関して、今回出展されますが、ロボットを使って毛髪に関わる皮膚を採皮できるまでになっています。毛を生やすという夢はいろんな側面から現実化していますね。この一年で大分変わってきたのかな、という実感があります。

具体的に、再生医療に関してはどの程度まで進んでいるのですか。

倉田荘太郎:再生医療はかなり進んでいて、注目すべき研究がたくさんありますね。

貴志:例えば、東京医科大学の坪井良治先生と資生堂の岸本次郎先生の研究があります。岸本先生にこの前お目にかかった時、5年ほどで臨床まで持っていくとおっしゃっていました。
これは毛乳頭細胞の周囲にある結合織性毛包の幹細胞を移植することで毛乳頭を活性化するというもので、まず小さくなった毛を活性化して強くするという研究です。毛を生やすというものではないのですが、普通に薄毛になってくるということは決して毛根が無くなるわけではなく、毛根がミニチュア化し、小さくなっています。それを元の太い毛に戻すというものです。

倉田:これは元々、あるカナダの会社のアイデアですね。

貴志:臨床的には元々ある毛を元気にする。元の細胞を移植すると、そこに入っていって元気にするという話なので、みるみる増えてくるという話ではないのですが、非常に分かりやすい話ですね。

もう一つは、理研の辻孝先生たちのグループが長年地道に行っている研究で、表皮の幹細胞と真皮の幹細胞を一緒にして、それを植えるというもので、雑誌『Nature Communications』でも報告しています。

倉田:それは器官原基法といわれる技術ですね。毛というのは間葉系の毛乳頭細胞と毛包上皮系の幹細胞に よって生えます。それを供給している根本の幹細胞同士を増やしてくっつけるというわけです。辻先生たちは歯の再生などでも成功しているグループなので、私は臨床的にも非常に近いところにいるという印象を持っています。

貴志:元々は上皮と間葉系の相互作用で再生する方法ですね。

倉田:人間の身体の臓器というのは、この二つの種類が相互作用してできていることが多い。そういうところからも、これも理にかなった方法ですね。

貴志:形成外科基礎学術集会で行われた辻先生の特別講演で、実際はどこまで進んでいるのかを話されていましたが、多くの臓器は身体の中にある幹細胞でケアできるが、さらに完全な皮膚を作るのには胎児の形をしたもの、つまりiPS細胞を使わなければいけないのかな、ともおっしゃっていました。ただしそのなかでも、毛だけは身体の中にある幹細胞でできる、とも話されていましたね。

倉田:つまり幹細胞というのは非常にプリミティブで原始的な細胞で、一番根本になる幹細胞は何にでもなるんですね。さらに次の段階の幹細胞、つまり方向性が決まった組織幹細胞(毛包幹細胞)を使えば、その方向性は決まるというわけです。細胞を元の状態に戻していけるという技術ができているということは、とても進化したすごいことですね。

毛、脂腺、汗腺のある正常な皮膚の再生とは

桑名 隆一郎 医師

倉田:もちろん、iPS細胞を使った毛髪再生の可能性もかなり高い。毛も皮膚の一種なので、皮膚ごと再生するというのもこれから進むと思います。皮膚というのは表皮と真皮だけではなくて、さまざまな付属器もあります。それが毛包という毛と、それにくっついている脂腺や汗腺などすべてを作ることができれば、形成外科の臨床にとっても、とても大きな要素になりますね。皮膚のすべてができる時代が来る可能性も見えてきましたね。

貴志:実際のところ現在は、そうしたものは培養表皮のシートだけでやられているので、倉田先生のおっしゃられたような体毛も汗腺もまだありません。それが本当に3次元的にできるようになれば、質のいい皮膚、熱傷のあとの傷痕などを分からなくするような可能性も十分にありますね。毛を作るということは、原理としては同じようなものだと思います。

倉田:再生医療で毛を作るとなると、同じ幹細胞でも、毛包脂腺系と呼ぶのですが、脂腺もできるようになります。そういうところから今度は、ある条件を揃えると汗腺などもできるし、また条件によってどこの皮膚もできるとなれば、これはすごいことですね。

身体の各部位の皮膚によっても、その条件には違いがあるのですか。

倉田:全然違います。人の皮膚の部位によって、厚さもその付属器の数も違います。それぞれの場所で毛の太さももちろん違います。形成外科は、それぞれのやけど痕は、それぞれの部位に性質が近いところから皮膚を取って来て皮膚移植をしますが、それにはやはり限度がありますね。

貴志:形成外科医は正常な皮膚を目指しているのですが、例えば傷ができれば、傷跡が残ってしまいます。傷跡とは何かを調べてみると、傷跡には毛が生えてこなかったり、汗腺が無いとか、あとは表面にあるキメですが、皮膚を拡大してみると細かいデコボコがあるのですが、それが無かったり。逆に言えば、そういうものを一個一個正常なものに近づければ、いずれは正常な皮膚になるわけです。その中で大きな役割を担っているのが毛なんです。毛ができれば、脂腺や汗腺なども同時にできてくる可能性もあります。

皮膚は、毛、脂腺、汗腺などが一体化しているものなのですね。

貴志:毛というのは、皮膚の溝がクロスするところから生えてきます。また、皮膚の溝の丘になって盛り上がっている真ん中から汗が出てきます。ということは、そのへんのところが全部一体化しているわけですから、毛の再生ができれば、皮膚の再生そのものの実現も近いことになります。
皮膚はそれぞれの場所によっても違います。手のひらの皮膚の表皮に毛が生えてくるかといえば、そうはいきません。

倉田:ただし、それにも条件があって、ネズミの場合は、手のひらでも毛の毛乳頭を植えると毛が生えてきます。上皮系細胞はどこの上皮系でもよくて、毛を生やすコントロールセンターは毛乳頭の間葉系細胞側にあるからです。
このことは以前から分かっていて、1960年代にはラットのヒゲの毛乳頭を耳に移植して太いヒゲの毛に変化するという論文が出ています。その発見は1940年代の鳥の羽根の研究がきっかけです。鳥の羽根の根っこにも毛乳頭があって、それが鳥の羽根の色や性質をコントロールしています。鳥の羽根の培養が始まって、そこから動物の毛の培養へとつながったのです。ですから、毛を生やすコントロールは間葉系の側だろうと最初から言われていました。

幹細胞による再生医療によって、毛が再生ができるようになるのは、いつ頃になるのでしょうか。

倉田:3年で完成するというものではないと思いますが、臨床的にはかなり使えるところまで持っていきたいという思いで研究は進められています。

毛髪再生を促すサイトカインを出すための多くの手法

毛髪再生にはiPS細胞も注目されていますが、その研究はどこまで進展しているのでしょうか。

貴志:再生に有利な状態の細胞を作るにはiPS細胞が有利ですが、iPS細胞を使って毛髪再生するには、相当高いハードルがあります。現在、先行している網膜にしても安全性を検討しながら行われていますが、本人のiPS細胞を作って本人に戻す、ということが可能かどうかというと、経済的な問題も含めてまだ分からないところがあります。私も長らく胎児の研究をしていますが、胎児に近い細胞を作るという点では、確かに一度iPS細胞の状態にしないと難しいのです。網膜の再生そのものもそうなのですが、最終的にはiPS細胞を使って臓器を作るというのは大きな課題なのです。
ただし、その前に安全性を確認する必要があります。網膜も万が一腫瘍化(ガン化)した場合、レーザーを使ってなんとかすることができる、ということでやっているんです。皮膚にしても、安全性という面では何かあった時には取り除けばいい。そういう意味では、網膜や毛のような臓器はいいのかもしれません。

倉田:身体の外側ですから、見つけやすいのです。

iPS細胞が腫瘍化するというのは、多々あるのでしょうか。

貴志:私の研究でiPS細胞を使っているわけではありませんが、実際にiPS細胞を使っている先生方に聞けば、まったく腫瘍化しない細胞はどれか、を見つけ出すのが、なかなか大変だと聞いています。

倉田:iPS細胞はどの細胞でも分化できて、増殖能力が高いということですから、悪い方向に行く可能性もあります。だから自分の持っていきたいレールの方向だけに走っていってくれるかどうか、そのための条件付けは非常に難しいですね。
そういう意味では、脂肪幹細胞での毛髪再生というのはどうでしょうか。

貴志:今、とても流行っていますが、脂肪幹細胞は血管新生の関係で使われているという印象が強いですね。例えば、幹細胞の組織再生に関する機能を活用して、脂肪と混ぜることによって、うまく脂肪移植が定着するようになったり、あるいは、足の病変で治らない傷が良くなったりなどでしょうか。毛髪再生の場合は、表皮細胞と真皮細胞の組み合わせで毛を生やすわけですが、脂肪のなかにもそういう幹細胞があって、どんな細胞でもできてしまうイメージがありますね。
例えば、脂肪幹細胞と同じように何にでもなる幹細胞に骨髄幹細胞があります。骨髄の中にも血管新生因子を出すような幹細胞があって、それで血行を良くしたりとかなりのポテンシャルを持っているのですが、それができるから他の臓器のどんなものでもできるかというと、そうでもないのかな、とは思います。

倉田:幹細胞には、脂肪幹細胞、骨髄幹細胞、臍帯血の幹細胞などがありますが、それらの幹細胞がいったい何を出しているのか、どんなサイトカインの種類を出しているのか、そして幹細胞自体がどれぐらいの量のサイトカインを出しているのか……それらが分かってはじめて、ではこういう目的で使うときはこの幹細胞だ、という使い方が大切になりますね。
そして大事なことは、コンデションメディウム(細胞を一定期間培養して、そこから回収した培養上清)からサイトカインを取り出し、毛髪に必要なもの、あるいは血管新生に必要なものをきちんと選り分けられるような段階にいかないとうまく機能しない可能性があります。幹細胞という言葉に振り回されたり、幹細胞は万能という認識を持っていたりと、最近では美容などでもやたらに幹細胞が使われていますが、ちょっと違うかな、と思います。

貴志:幹細胞を移植すると、細胞が再生したり、あるいは臓器になったり、幹細胞は身体にいいものを出すというイメージがあります。しかし、これはあまり言われていないことですが、逆に悪いものを出している可能性だってあるかもしれません。だから毛髪再生に関しても、幹細胞だからいい、ということには疑いを持たなければなりませんね。

倉田:毛髪にはヘアサイクルというものがあるので、幹細胞が成長期を誘導したり、太くしたりというサイトカインを出す場合はいいのですが、逆に休止期に持って行くサイトカインを出している可能性もありますから、幹細胞だからいいんだと一緒くたに身体のなかに入れてしまえば、幹細胞が何をしているのか分からないようなことになってしまいます。
本当はそういうことが分かった上で科学的に分析して、毛髪に関する治療法を確立するのが一番いいとは思うのですが、まだどういうサイトカインを出すのかが分からない段階では、専門家は逆のことが起こり得るということも認識していなければなりませんね。

今回の学術会議での、その他の注目点というのはなんでしょうか。

貴志:二日目の学術講習会ではPRP(採決して血小板を凝縮した成分、血小板血漿)が毛髪にも効くというので、関西医科大学の楠本健司先生にお話をしていただきます。血小板血漿を打つだけなのですが、小じわの改善や発毛効果もあるらしいのです。

倉田:やはりPRPもサイトカインが出ているんでしょうね。どういうサイトカインが含んでいるのかによってどのように効くのか、最終的には重要になってきますね。PRPを含んで、どのように毛髪を再生させるのか、太くしたり、強くしたりというサイトカインはすべて分かっているわけではありませんが、そのサイトカインを出す元になるものをどこから取って、どのように導入するのか、現在さまざまな手法が出てきた印象があります。
先にお話をした幹細胞もそうなのですが、幹細胞の培養上清もPRPも今のトレンドなんですが、すべてサイトカインという言葉でまとめられるかもしれませんね。例えば、LEDの研究もサイトカインを自分の細胞から出させるもので、サイトカインを外から加えていくのか、中から出させるのか、ということも言えるかもしれませんね。

貴志:再生医療に関してはとても大事なことがあります。再生医療新法ができたことにより、再生医療をするのはどういう手続きを踏まなければならないかのかを、順天堂大学の田中里佳先生にも話をしていただきます。

倉田:美容でちょっと流行りかけているのは、脂肪幹細胞を自分のものをとって培養し、点滴で自分の身体の静脈の中に入れるという方法があります。これも可能性のある医療ですが、かなり慎重にエビデンスを見ていかないといけない、とも思いますね。

貴志:再生医療新法ができて、再生医療はハードルがかなり低くなっていますが、スタートして何か大きな問題が起きてしまうと一気にその研究や医療が止まってしまうことも考えられます。再生医療は慎重に進めていかなければなりませんね。

インタビュー・文/佐藤彰芳 撮影/圷 邦信、田村尚行

アデランスの研究から生まれた開発と商品・サービスの歴史
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