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アデランスの研究開発 Case

どうすれば、髪はよみがえるのか

脱毛の医学的なメカニズムが解明され、薬剤治療や物理的療法など毛髪医療の進捗は著しい。
桑白皮エキスを研究・開発して毛髪のアンチエイジングに取り組む桑名院長と、 最先端の育毛医療に詳しい倉田院長に、毛髪医療の〝いま〟と未来を語っていただいた。

1990年頃、臨床的にも研究的にも、髪の毛に興味を示すお医者さんはほとんどいなかった。そして「薄毛は治療できない」とさえいわれた時代だった。

その頃、名古屋大学医学部を卒業した桑名隆一郎医師は国立名古屋病院臨床研究部の研究棟にこもり、毛包細胞の培養実験をコツコツと始めていた。

一方倉田荘太郎医師は、90年代前半に米国ウィンスコンシン大学に留学。「当時、薬剤による薄毛治療の基礎研究が劇的に進化していた」ことに驚き、ミノキシジルなどがどのように毛包細胞に吸収されるのかという研究を進めるようになった。

この二人の医師の研究に代表されるように、90年代には人の毛髪の成長・退行・休止期のメカニズム、いわゆる毛包幹細胞の存在や男性ホルモン作用の機序が解明され、細胞に直接働きかける成分のいくつかも特定されるようになり、男性型脱毛症にとって新たな光明が訪れる時代となる。

男性型脱毛症と男性ホルモンそして遺伝の関係とは

桑名 隆一郎 医師

桑名隆一郎:私が脱毛の研究を始めた頃、円形脱毛症の毛が抜ける原因とされていたリンパ球をヘルパーT細胞やNK細胞に分ける酵素抗体法という方法が出てきました。私は円形脱毛症が進んでいるケースと治っていくケースではそれらの細胞が異なっているのではないかと考え、円形脱毛症の患者さんにお願いして皮膚を少し取らせていただき、研究室で調べましたが、関連性は認められなかった。そこで毛包細胞の培養研究に切り替え、その細胞にいろいろな物質を加えることにより、細胞分裂のスピードを速めたり、長く生かすことができるという実験を始めました。培養にはコラーゲンがいいと聞けば、牛の屠殺場に行って牛の眼球(コラーゲンを含む)をもらってきて、冷蔵庫に保管していました(笑)。

倉田荘太郎:現在は市販されているコラーゲンを買ってシャーレに溶かして研究していますが、確かに以前はコラーゲンの研究者はそうでしたね。私が属していた研究室でも、冷蔵庫に牛の目玉がズラーッと並んでいました。ビール缶と一緒にね(笑)。

桑名:その後しつこく研究を進め、毛包細胞を分解するタンパク質分解酵素トリプシンから始まり、徐々に進化して、なんとか毛包細胞が培養できるようになりました。こうした実験をもとに育毛剤を作り、それを臨床的に使用したところ、従来にない良い結果が得られるようになったのです。

倉田:桑名先生が細胞の培養研究を行なっていた頃、日本でも基礎研究が進み、細胞バイオメカニクスという分野が発展し、広まりました。私は桑名先生より1〜2年遅れて始め、脱毛症をイメージしながら皮膚とホルモンの関係の研究から手がけました。

桑名:細胞バイオメカニクスの研究が始まり、多少はピンときましたが、こうした研究はそう簡単に上手くいかなかったですね。

倉田:病理学的な研究はもっと前から行なわれていて、男性ホルモンと男性型脱毛症の関係を明確にするということが課題でした。同じ男性ホルモンなのに髪の毛では脱毛が起こりながら、ヒゲは太くなる。そういうパラドックスを解明しようというのが私たちの命題でした。私も一緒に行なっていた大分医科大学内での研究、男性ホルモンと皮膚の関係に含まれる男性型脱毛の解明もそうした一連の研究でした。

その結果、かなり明確にわかってきました。テストステロンという男性ホルモンが毛髪の成長を制御する毛乳頭細胞のなかに入っていくと、酵素の働きでDHT(ジヒドロテストステロン)というより強い男性ホルモンに変化し、そのDHTが細胞内でレセプターと結合すると、上皮系の毛母細胞に影響を与えます。それはヒゲには成長を促す一方、前頭部や頭頂部には毛髪の発育を抑えるシグナルを出す。このようにスタートは一緒なのに、違うことが起こるということが分かってきました。

それが分かってくると、脱毛を抑える方法として、この酵素の働きをブロックすれば、原因の元を絶てると、薬として開発されたのがフィナステリドで、これが脱毛治療の大きな発展につながりました。そして、その前に出たのがミノキシジルです。

桑名:ミノキシジルは元々育毛とは関係がない。これは血管拡張剤でいまだに説明がつかない。血管内皮細胞同士が増殖したなど多少は良いのですが、事の起こりは高血圧の経口薬ですから、明確なメカニズムは解明されていない。例えば、毛が抜ける前に使用して去勢すると進行はしませんが、毛が抜けてから使用すると、毛が抜ける進行は止まりますが、毛は生えてきません。

倉田:この研究は1942年に、アメリカで行なわれました。去勢した人の経歴を調べると2つのことが分かった。男性ホルモンの影響で脱毛が誘導され、男性ホルモンが無くなったら止まる。もうひとつ、前提条件として遺伝があります。薄くなる家系であれば、男性ホルモンが加わると進行する。しかし、去勢すると男性ホルモンが出なくなるから進行しなくなる。薄くなる家系があっても進行しない。2つの条件がそこではっきりわかった。それが非常に大きな意味を持つ論文となった所以です。

桑名:人類共通として個人個人でそれぞれ違うのは1点、遺伝だけです。

倉田:患者さんが心配して来られても、かなり遠くの家系で薄毛の人がいれば、「男性型脱毛になる可能性はあるかもしれない」が、あらゆる家系に薄毛の人がいなければ、「あなたは男性型脱毛症にはなりません」と言い切れますから、心配しなくて良い。

桑名:去勢すれば、男性ホルモンは減少し、進行は止まるけど生えることはない。トータルで見ると男性ホルモン量10のところが1だったり、3になることもある。3あれば進行する力は無いんだけど、生えるところまではいかない。そこそこ良くなるけど、細くなったら進行する一方かもしれない。

   
女性の抜け毛の研究と桑白皮エキスの効用

倉田 荘太郎 医師

倉田:副腎はテストステロンになる前の段階の、弱い男性ホルモンをつくります。それが副腎でつくられるから、女性も男性の10分の1ぐらいはテストステロンを持っているのです。ですから、女性もニキビやワキガ(腋臭症)が起こったりするんです。男性ホルモンは男性だけのものではなく、女性も持っていて、女性の脱毛につながっていますね。

桑名:男性ホルモンが少ないほうが良い。しかし、男性ホルモンはあっても受容体タンパクがうまく働かないと、染色体は男なんだけど、男性ホルモンは働かない。しかし、そんな方でも女性の薄毛は発症しますので、男性ホルモンが原因ということだけでもないと思います。

また、逆の説もある。例えばマウスを使ってのエストロゲン(女性ホルモン)の実験では、マウスは完全に毛が生えなくなるので、人間も同じようにエストロゲンによって毛が生えにくくなるのかもしれません。男性ホルモンがいかんのか、女性ホルモンがいかんのか、両方いかんのか。男性ホルモンも女性ホルモンも両方ない小さい子どもが、脱毛しないことは間違いない。

倉田:女性の場合は複雑ですね。女性でも、これは男性型脱毛症だと思うものがあります。男性ホルモンが少なくなることによって起きなくなる、と思えるものが何割かある。それ以外のものは分からないから確定できない。

女性の髪の太さ、量のピークは20代の終わりから30代の中頃なんです。そこからはほとんどの女性は髪が細くなり、本数も減ってきます。そういう年齢で症状として現れてくるということは、女性ホルモンが減ってくる、と想像できます。そこから先、脱毛といえるぐらいに進展するかは分からない。ボリュームが落ちたとか、髪のまとまりが悪いと感じるのがその年代からなんですね。

桑名:女性で一部の髪が細くなるのは生理が始まってからとか、更年期とか、また、妊娠や出産など。女性の場合はターニングポイントがあるから原因がわかりにくいし、女性の髪に関しては特に難しい。女性ホルモンで抜けるのなら、更年期になったら進行が止まるはずですから。

倉田:しかし60代になれば、老化現象として確実に髪は細くなる。その意味でも女性の脱毛症に対する育毛剤を開発したというのは社会的にも非常に貢献度が高い。難しいけれど、成功したその一つが桑白皮エキスですね。

桑名:徳島大学のときに桑の根を取ってきて研究を始めました。桑白皮というのは桑の根の表皮からつくられた自然の生薬ですが、マウスの実験では髪の休止期でも髪が早く成長し、塗ったらそこだけ生えてきました。培養した細胞に加えてみると、細胞の増殖促進効果もあることが分かりました。

倉田:桑白皮エキスは素晴らしい効果を発揮していますね。こういうものは細胞増殖因子を誘導します。直接的に注射しなくても効いてくれるから良いと思うのですが、最近の流れでいくと、ダイレクトに必要なものを注入するという方法も流行っています。

桑名:ステムセルに効果があります。

倉田:ステムセルというのは幹細胞ですね。脂肪幹細胞が生み出した培養上清を集めて抽出して、薬品として注入するわけです。桑白皮エキスは、育毛作用のある重要な細胞増殖因子を自分の細胞につくらせ、誘導してくるという薬剤ですね。注射で注入するなどの方法がありますが、それに代わる多彩な誘導方法が注目されています。

桑白皮エキスの臨床実験

桑白皮エキスによる改善例

 
現在、薄毛治療はどこまで進んでいるのか
 

倉田:それは大きな分子を入りやすくするイオン導入や、頭皮に短く強い特殊な電気パルスを与えて細胞と細胞の間にすき間を空けて成分を真皮下層まで入れるエレクトロポレーションという方法があります。そして物理的な方法として注目されているのが、ナローバンド赤色LED照射です。LEDは安全性が高いことが分かっていますので、将来的に面白い方法になるんじゃないかと期待されています。

桑名:LEDはその効果が分かるほど、髪の毛は生えているのですか。

倉田:臨床試験も数十名単位でやっていて、確実な統計はとっていないのですが、施術を受けた7割ぐらいの人が、良いと答えています。

桑名:なにがしかの反応がある?

倉田:ええ、ある程度良いと確認されています。こういう治療はほかの治療と一緒にでき、飲み薬などとも併用できるので、一つの治療で満足できない人がプラスの治療をいくつか重ねていくと、満足度が上がっていく重要な選択肢になると思います。

桑名:育毛用レーザーが結構普及してきているようです。

倉田:脱毛レーザーは瞬間的に強力にメラニン色素に働きかけます。レーザーを当てるとメラニンが破壊されて毛根が熱でダメージを受けて生えにくくなるという治療ですね。ところが、それがゆるく当たる、軽い刺激を与えると発毛促進が起こり得る。ですから、脱毛レーザーを当てたのに毛が濃くなった、という報告もありますね。

桑名:生える人もいるし、円形脱毛症に効く人もいますね。

倉田:波長とその条件を決めていくのは難しく、エキシマライトも使いますね。どれくらいの波長の長さ、強さでどんな反応が起きるか、という研究も進めないといけませんね。

だいたいこの世界は棚ボタが多いんです(笑)。ミノキシジルも高血圧の人が使ったら、毛が生えちゃった。今、まつげの育毛用に使うタラノプロストとビマトプロスト。これは緑内障の患者さんに点眼をしていたら下睫が濃くなった。「これは副作用だ」と眼科の先生が発表したら、毛髪の研究者が「おっ、良いなこれ」となって、実験したら確かに毛が生えてきたのです。

新たに薄毛治療はどこへ向かっていくのか
 

倉田:今後期待できる薄毛治療は、近い将来なのか、中期的なものになるかは分かりませんが、細胞を使った毛髪再生も出てくる可能性は期待できます。リスクを考えると、現実的に広まっていくのは難しいかもしれませんが、科学的にはその可能性はかなりありますね。

桑名:脱毛症に対応できる再生医療には、2つのパターンが考えられます。一つは髪の毛のある皮膚の細胞からのiPS細胞を取り出して毛髪を作らせるわけですが、今のところハードルが高い。もう一つの、毛をつくる毛包幹細胞と毛乳頭細胞を使ってやるということなら、臨床応用が早いかもしれません。ただし、5年でできるかどうか、ですね。

倉田:培養細胞による毛髪再生は技術的にはかなり可能な領域に入ってきていて、毛の幹細胞と毛の間葉系の細胞を両方一緒にして注射しますと、毛が生えてくることは確認できていますね。

インタビュー・文/佐藤彰芳 撮影/田村尚行

アデランスの研究から生まれた開発と商品・サービスの歴史
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